学校から家へ帰る。
入り口にあるポストを覗くと、手紙と夕刊と小さな箱が入っていた。
「ポストにこんなものを郵便屋が入れるなんて。家の人に渡せよ」とか思いながら誰宛かを確認する。
どうやら兄への品らしい。
ふと箱にKONAMIの文字が見える。
小箱のサイズに見覚えがあり、非常に嫌な予感がしてラベルを見る。
桜咲刹那 ネコ耳セーラー服Ver
どうやら授業で色々と疲れているらしい。
おかしな文字が見えた気がするがきっと気のせいだと思う。
見間違いであることを信じてもう一度見てみる。
桜咲刹那 ネコ耳セーラー服Ver
でかでかと書かれているラベルの文字に気が遠くなる。
世の中には否定したくても認めなきゃいけない現実があるらしい。
頭の中で「戦わなきゃ現実と!」とどこぞのCMで聞いたことがあるような声が流れる。
しかし、逃げれるものなら逃げるのが賢い生き方ではないかと私は思う。
とりあえず現状として、左手に手紙と新聞。
右手にファンタスティックな物体。
「郵便屋。あんたは正しいことをした」と思わず感謝したくなる。
見つけたのが私だからまだ良かったが、『こんなものを父が見た日には』と考えただけで欝になる。
さてどうしたものかと考えていると玄関から御姉様が出てくる。
非常に焦りながらも頭の片隅で「何故焦らにゃならんのだ」と自問する。
私の前で手を出してくるので、左手の物を渡すとまた家に戻っていった。
ここで右手のものを渡していると、それはそれで楽しかったのかもしれない。
しかし、人間とは追い詰められたときに素直な行動が出るのだろう。
生憎、私はそんなに悪人ではないらしい。
家に入って、傘をおくのも忘れて兄を捜す。
しかし家の中にはいない。
どうやら大型二輪の免許を取るために教習所に行ったらしいので、机の上にひっそりと置いて逃げる。
もう私は知らん。
あとは野となれ山となれ。